小惑星探査機「はやぶさ2」、世界初の小惑星フライバイ時のレーザ測距に成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2026年7月5日(日)、小惑星探査機「はやぶさ2」の拡張ミッションにおける最初の探査対象である小惑星「トリフネ」のフライバイにおいて、レーザ高度計「LIDAR」(以下、LIDAR)による小惑星フライバイ時のレーザ測距を、世界で初めて成功させました。
レーザ測距とは、レーザパルスを対象に照射し、それが対象表面で反射して戻ってくるまでの時間を計測することにより、対象までの距離を高精度で測定する技術です。「はやぶさ2」に搭載されているLIDARは、これまでも小惑星「リュウグウ」の表面形状のデータ取得で大きな成果を挙げ、探査機の航法においても重要な役割を担ってきました。しかし今回の小惑星「トリフネ」フライバイ時における測距はこれまでとは異なる大きなチャレンジでした。それは、馬を御しながら姿勢を整え、的をとらえた一瞬のタイミングを逃さずに矢を放つ流鏑馬(やぶさめ)のごとく、高速で移動する探査機から小さな対象である小惑星「トリフネ」にレーザを当てる必要があったためです。このような難しい測距を成功させるためには、探査機の軌道と姿勢の正確な制御と、ノイズを反射光と誤検出しないための的確な機器設定が必要でした。たった1回のチャンスを逃すことのないようにと臨んだ事前準備と当日の運用が見事に実を結び、18時29分56.5秒と57.5秒(トリフネ最接近の約4秒前と約3秒前)の2回、それぞれ約20kmと15kmの地点で測距に成功しました。
レーザは非常に細く絞られており、トリフネ表面のごく一部にしか当たりません。具体的には、距離が20kmのときの照射範囲は直径およそ30mの領域に限られます(15kmならば23m)。実際にレーザがトリフネ表面のどこに当たっていたのかについては、現在、詳細な解析を進めています。
宇宙空間には大気がないため遠方が霞むことはなく、また比較相手もいません。このため画像データ(写真)だけでは、遠くにある大きな天体と近くにある小さな天体の区別が付きにくくなります。そこにレーザ測距のデータが加わると、写真にスケールを入れることができ、天体の大きさを正確に求められます。また、複数時刻で測距データが取得できると、探査機の追跡データと合わせることで天体の位置と速度の両方を精度良く求めることができるので、天体軌道の予測精度が向上します。小惑星に関するこれらの情報は、惑星探査だけでなく地球への天体衝突を把握し対処するという地球防衛の観点で非常に重要です。
さらに、レーザを使った観測は太陽光の条件に左右されず、写真では影になって見えないような場所からもデータが得られるという特徴があります。将来、より高性能なレーザ照射装置を用いれば、日照条件の悪いフライバイ軌道を取らざるを得ない場合でも、探査機を正確に誘導し、天体の大きさや形状、運動といった様々な情報が得られるようになると考えられます。今回の測距成功は、JAXAの深宇宙探査技術の高度化に向けた重要な技術実証成果であり、大きなマイルストーンとなりました。
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