Event
第130回 附属社会創造数学センター主催 北大MMCセミナー :グラフ・ハイパーグラフ上のダイナミクスの情報幾何学(小林 徹也 氏)
Event Date: Jul 28, 2022
Time: 2022年7月28日(木) 16時30分 ~ 2022年7月28日(木) 18時00分
Place: 北海道大学電子科学研究所
中央キャンパス総合研究棟2号館5階講義室
Speaker: 小林 徹也 氏(東京大学生産技術研究所)
Title: グラフ・ハイパーグラフ上のダイナミクスの情報幾何学
(Information Geometry of Dynamics on Graph and Hypergraph)
Abstract:
本発表では、グラフやハイパーグラフで表現された離散空間上に定義される確率や正値密度のダイナミクスに着目をし、その情報幾何学的な構造を明らかにし、関連諸分野との関係性を議論する。
力学系は物理法則を記述する数学的な基盤であり、現在では社会現象や機械学習の最適化など広い分野でその知見が応用されている。力学系の持つ性質は目的に応じて様々な側面から調べられ、位相幾何学的方法や、シンプレクティック幾何的な方法、大域解析的方法など豊かな数学がそこから生まれている。その中でも、力学系の勾配流的な側面や変分的構造に着目したアプローチは、熱力学的な系を特徴づけるという目的に端を発する。ポテンシャル関数の一般化としてのリアプノフ関数の発展や、90年代頃からのWasserstein幾何学との関連性の発見、そして機械学習における勾配降下法の近年の活用などを経て、最近特に盛んに研究がなされるようになっている。
最近の研究、特にWassersteinに連なる研究や機械学習応用の研究ではユークリッド空間や多様体上に定義された密度の時間発展、つまりフォッカープランク方程式や多様体上の密度の無限次元力学系(偏微分方程式)が調べられてきた。
一方で本発表が主眼とする、有限グラフやハイパーグラフで表現される離散空間上で定義された有限次元密度の時間発展方程式も、グラフ上の拡散過程、ネットワーク上のダイナミクス、感染症伝播、化学反応ネットワークなど、広い応用性を持つ。しかし、その幾何学的・変分的構造は有限次元にも関わらず無限次元の知見の単純な拡張として捉えることができなかった。
本発表では、密度のダイナミクスが持つ情報幾何学的な構造が特に離散多様体上のダイナミクスで本質的な役割を果たすことを示す。この構造は、密度空間および流れの空間の2つの空間にそれぞれ情報幾何学的な双対平坦構造を考え、その2つが代数ホモロジーによる離散解析的な関係で結ばれているものである。情報幾何からみると2つの代数的に連結された双対平坦空間の問題であり、代数ホモロジー的には内積構造をLegendre-Fenchel双対に置き換えた拡張にみなせる。この構造は形式的には無限次元の結果を特殊ケースとして含む形になっており、したがって様々なダイナミクスの幾何学・変分的な構造の基礎になる可能性がある。
本発表では、ハイパーグラフ上の非線形力学系のクラスとしてみなせる化学反応ネットワークを主な事例として、この構造について関係する結果などを示したい。
(1) Y.Sughiyama et al, A Hessian Geometric Structure of Chemical Thermodynamic Systems with Stoichiometric Constraints, arXiv (2022)
(2) T. J. Kobayashi et al, Kinetic Derivation of the Hessian Geometric Structure in Chemical Reaction Systems, arXiv, (2022)
(3) T.J. Kobayashi et al, Geometry of Nonequilibrium Chemical Reaction Networks and Generalized Entropy Production Decompositions, arXiv, (2022)
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