Event

談話会: 環境変動に対する枯草菌の集団形態(創平), カスプ特異点のミルナーファイバートポロジー(粕谷直彦)

Event Date: May 21, 2021

Schedule:
15:30~16:20 田﨑 創平 氏
16:20~16:40 休憩
16:40~17:30 粕谷 直彦 氏

Place: オンライン開催(zoom)

Speaker: 田﨑創平(北大理)、粕谷直彦(北大理)

Title:環境変動に対する枯草菌の集団形態/田﨑 創平(北大理)

Abstract:枯草菌は自然界に広く存在する細菌の一種であり、またモデル生物としてよく研究されてきた。枯草菌の細胞は環境に応じて多様な集団形態を示すことが知られている。また、適当な条件下では頑強なバイオフィルムを形成する。このような集団形態の多様性と頑健性を支えているのが、枯草菌の細胞ダイバーシティーである。枯草菌は環境条件や自身の細胞密度情報、コロニー内の部位などに応じて異なる細胞タイプを選択する。そして、各々の細胞タイプの形成する部分集団は、環境変化に応じて非常に細やかに活動を調節している。さらに、これらの集団間の分業によって、コロニー全体の頑健な成長を実現している。特に多様な細胞タイプからなるバイオフィルムの構造は、様々な機能を実現して長期生育を可能としている。本講演ではこのような枯草菌の集団形態形成について概説する。そして、細胞集団の自己制御を記述するマルチレベルな数理モデルによって、非一様な細胞集団の形成機構を説明する。分子生物学の進歩と集団形態変化に関する我々の一連の実験および理論研究が、枯草菌のコロニーパターン形成の未解決問題にひとつの答えを与えることを披露したい。本研究は、中山まどか氏(仙台高等専門学校)、高木泉氏(東北大学 / 中国人民大学)、東海林亙氏(東北大学)との共同研究に基づく。

Title:カスプ特異点のミルナーファイバーのトポロジー/粕谷 直彦(北大理)

Abstract:J. Milnorは原点に孤立特異点をもつn変数複素多項式について、その偏角が$S^{2n-1}$上に今日ミルナーファイブレーションと呼ばれるファイブレーション構造を定めることを示した。ミルナーファイブレーションの各ファイバーはミルナーファイバーと呼ばれ、その境界はリンクと呼ばれる。これらはしばしば微分位相幾何学において重要な例を提供する。代表的な例は、ポアンカレホモロジー球面、エキゾティック7次元球面、5次元球面上のローソン葉層構造である。このようにミルナーファイブレーションは重要な研究対象である一方で、ミルナーファイバーの微分同相型やシンプレクティック構造まで特定した研究は少ない。そこで本講演では、カスプ特異点と呼ばれるある3変数多項式特異点について、そのミルナーファイバー上に種数1のラグランジュ・レフシェッツ束構造を具体的に構成することで微分同相型を特定することができ、さらにシンプレクティック構造もほとんど特定できることを紹介する。また、この結果の応用として、双対なカスプ特異点の組とK3曲面との関係性が得られるので、それについても解説する予定である。本講演内容は、児玉大樹氏(東北大学AIMR/理研iTHEMS)、三松佳彦氏(中央大学)、森淳秀氏(大阪歯科大学)との共同研究である。