Event
令和7年度日本数学会北海道支部講演会・支部総会
Event Date: Dec 24, 2025
時間: 15:00 – 17:30
場所:理学部4号館5階 若手研究者交流室(4-501)
講演者:中野 雄史 氏 (北海道大学)、若狭 恭平 氏 (室蘭工業大学)
プログラム
15:00 – 16:00 中野 雄史 氏 (北海道大学)
題目: 可微分力学系における様々な観測可能現象
概要:
Poincaré以来、BirkhoffやSmaleによってカオスの存在証明は大きく進展しましたが、そうした古典的な結果は多くの場合、馬蹄集合と呼ばれる双曲不変集合の存在を示すものであり、その吸引域のLebesgue測度はしばしば0です。この意味での「存在はするが、ほとんどどこでも観測されない」カオスから、「ほとんど全ての初期値から観測される」カオスへの橋渡しが、Palis予想前後の(1980〜2010年ごろの)研究によって大きく発展しました。本講演では、Jakobson, Benedicks-Carleson, Mora-Viana, Ott-Wang-Youngらのいわゆる「階数1アトラクター理論」に代表される可観測カオスを主たる対象として、可微分力学系における「観測可能現象」を概観します。あわせて、ハミルトン力学系・保存系における可観測カオスに関する有名な未解決問題や、Newhouse領域における観測可能な時間平均・Lyapunov指数の非存在に関する講演者自身の最近の結果についても紹介します。
16:15 – 17:15 若狭 恭平 氏 (室蘭工業大学)
題目:非線形波動方程式の初期値問題に対する解の存在時間について
概要:
小さい初期値に対する冪乗型の非線形波動方程式の解析は、Fritz John (1979) に始まる。
空間3次元において、臨界指数と呼ばれる、ある非線形指数を境にして時間大域解の存在と非存在(解の有限時間内爆発)が分けられるという結果である。
この結果は、解の各点的な評価をベースとした解析であるが、波の特性方向に関する減衰を導出することが最も重要である。このことは、他の空間次元における臨界指数の決定や解の存在時間に関する最良な評価を導出することにおいても重要である。
更に、解の存在時間の評価については、広い意味でのホイヘンスの原理が成立するか否かが重要であると講演者は考える。
講演では、前述の John の結果をはじめとする歴史的な背景や、ホイヘンスの原理と解の存在時間の関係、最近の研究の進展について述べる。
17:15 – 17:30 支部総会
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
世話人:令和7年度 日本数学会北海道支部 評議員
田崎 創平(北大)、川崎 盛通(北大)