アブラナ科野菜における熱活性型レトロトランスポゾンとエピジェネティックな制御について
形態機能学講座IIIの伊藤助教グループは、アブラナ科の野菜17種類を用いて、熱活性型レトロトランスポゾンの配列の保存性や高温ストレス応答について解析しました(トランスポゾンの説明はこちら)。その結果、実験に用いた全ての野菜においてこのレトロトランスポゾン配列が保存されており、いくつかの種では37℃、24時間の高温ストレスを与えることでこのレトロトランスポゾンの転写が活性化することがわかりました。また、数種の野菜では高温ストレスにより、このレトロトランスポゾンの染色体外DNAが検出されました。染色体外DNAはレトロトランスポゾンの転移の中間体として生成されるもので、今回の結果から、アブラナ科野菜に保存された熱活性型レトロトランスポゾンは、37℃の高温ストレスにより転移する可能性が示されました。さらに、キャベツやブロッコリーなどが属しているBrassica oleracea種では、このトランスポゾンのコピー数の爆発的な増幅が見られるのと同時に、熱による転写活性がDNAのメチル化などエピジェネティックな機構により抑制されていることが示唆されました。Brassica oleracea種では、なぜこのトランスポゾンが増えたのか?その生物学的な意義に興味が湧きます。今回の発表は、博士課程の野沢さんと研究室卒業生の川岸さん、佐藤さんによる研究成果です。
発表論文: Kosuke Nozawa, Yuki Kawagishi, Akira Kawabe, Mio Sato, Yukari Masuta, Atsushi Kato and Hidetaka Ito (2017) Epigenetic Regulation of Heat-Activated Retrotransposon in Cruciferous Vegetables. Epigenomes 1(1): 7 (http://www.mdpi.com/2075-4655/1/1/7)