研究者情報

角五 彰

准教授

Akira Kakugo

動く物質『アクティブマター』を科学する

化学部門 物理化学分野

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研究テーマ

『アクティブマター』とは、化学エネルギーなどを運動エネルギーに変換する機構を内在的に有した物質群です。自発的に運動を発現するという点で、従来の物質群とは一線を画しています。私たちは、『アクティブマター』の科学を通じて、現在、我々が直面しているエネルギー問題や医療問題を解決することを目標としています。

研究分野高分子化学, 生物物理学, ソフトマターの物理, バイオ材料力学
キーワードアクティブマターの科学, 分子ロボティクス, マイクロマシン, 分子機械, 集団運動, 自己組織化, バイオテクノロジー, DNAナノテクノロジー, メカノバイオロジー

研究紹介

今日に至るまで内燃機関や電動機など様々な動力システムが開発されてきました。しかし、取り巻く環境変化や科学技術の進歩に伴いエネルギー供給や変換システムの刷新に期待が寄せられています。このような背景のなか、私たちは、化学的なエネルギーを運動エネルギーへと直接変換する生体由来のアクティブマター(生体分子モーター)に着目し、その物性や動作原理、動態挙動の解明に取り組んできました。最近では、生体分子モーターの高いエネルギー変換効率(~80%)や優れた比出力特性(電磁モーターの20倍)を活用した実用的な研究にも力を入れています。最近の取り組みは以下のようになります。
 
1)群れの研究
鳥や魚、細胞やバクテリアなどの生き物は,リーダーが存在しないにもかかわず,整然とした“群れ”を形成し,さらに環境合わせて、その形やサイズを変化させることができます。このように“群れ“をなすことで、1個体ではできなかったことが可能になってきます。最近,自発的に運動する生体分子モーターを用いて,このような”群れ“を実験室で再現するとともに物理的な刺激で群れの動きを制御することに成功しました(図1,2)。 “群れ”の研究は車やドローンなどの自動運転の開発にも役立つと期待されます。
 
2)アクティブ分子プローブの開発
生体分子モーターの動的特性を利用することで、従来、測定が困難であった柔らかい材料(ソフトマター)表面のわずかな変形を検出し,その変形の大きさと方向を測定可能な新しい技術を開発しました(図3)。ソフトマターは医療やエレクトロニクスなど多くの分野で近年注目されています。本技術はこのようなソフトマターの表面特性を調べるための新しい手法として期待されます。
 
3)分子ロボットの開発
ロボットの3要素である「動く・考える・感じる」のすべてを備えた分子ロボットを開発しました(図4)。化学的なシグナルや光の信号など特定の情報を感知し,自発的に“群れ”の形成・解消が可能で、かつ簡単な理論演算も行うことができます。 将来的内は医療現場などで活躍するナノマシンとしての応用展開に期待されます。
 
4)分子人工筋肉の開発
バイオテクノロジーにより合成される生体分子モーターとDNAナノテクノロジーにより合成されるDNAナノ構造体(DNAオリガミ)を組み合わせることで,自在にサイズを制御可能な分子人工筋肉の開発に成功しました(図5)。これにより,化学エネルギーで駆動するミリメートルからセンチメートルサイズの動力システムが実現しました。将来的には医療用マイクロロボットや昆虫型ドローンなどの動力源として期待されます。
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1.実験室内で再現した分子の群れ
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2.物理的な刺激による群れの制御
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3.柔らかい材料の物性を走査するアクティブ分子プローブ
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4.自発的に群れることのできる分子ロボット
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5.開発した分子人工筋肉の概念図

代表的な研究業績

"Adaptation of Patterns of Motile Filaments under Dynamic Boundary Conditions"
Daisuke Inoue, Greg Gutmann, Takahiro Nitta, Arif Md. Rashedul Kabir, Akihiko Konagaya, Kiyotaka Tokuraku, Kazuki Sada, Henry Hess, *Akira Kakugo, ACS Nano, (2019)
“Artificial Smooth Muscle Model Composed of Hierarchically Ordered Microtubule Asters Mediated by DNA Origami Nanostructures”
Kento Matsuda, Arif Md. Rashedul Kabir, Naohide Akamatsu, Ai Saito, Shumpei Ishikawa, Tsuyoshi Matsuyama, Oliver Ditzer, Md. Sirajul Islam, Yuichi Ohya, Kazuki Sada, Akihiko Konagaya, *Akinori Kuzuya, *Akira Kakugo, Nano Letters, 19 (6), 3933-3938 (2019)
“DNA-assisted swarm control in a biomolecular motor system”
Jakia Jannat Keya, Ryuhei Suzuki, Arif Md. Rashedul Kabir, Daisuke Inoue, Hiroyuki Asanuma, Kazuki Sada, Henry Hess, Akinori Kuzuya, *Akira Kakugo, Nature Communications, Vol. 9 (453) (2018)
“Sensing surface mechanical deformation using active probes driven by motor proteins”
Daisuke Inoue, Takahiro Nitta, Arif Md. Rashedul Kabir, Kazuki Sada, Jian Ping Gong, Akihiko Konagaya, *Akira Kakugo, Nature Communications, 2016, Vol. 7:12557 (2016)
“Formation of Well-oriented Microtubules with Preferential Polarity in a Confined Space under a Temperature Gradient”
Akira Kakugo, Yoshiki Tamura, Kazuhiro Shikinaka, Momoko Yoshida, Ryuzo Kawamura, Hidemitsu Furukawa, Jian Ping Gong, J. Am Chem. Soc, 131 (50), 18089-18095 (2009)
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学位博士(理学)
自己紹介

鳥や魚の群れなど、美しく整って動くモノや群れて動くモノに興味を持っています。高校を卒業後、北海道大学に進学。細胞の運動や筋肉の収縮に関与する生体分子モーターに出会い、化学エネルギーを運動エネルギーに変換するメカニズムについて研究。博士課程では、生体分子モーターを組み上げることにより化学エネルギーで駆動する世界最小の動力装置を開発。現在は生体分子モーターを駆動力とした分子ロボットの開発に力を入れています。

学歴・職歴2003年 北海道大学大学院理学研究科博士課程修了
2003年 北海道大学大学院理学研究科科学技術支援員
2004年 北海道大学大学院理学研究科生物科学専攻助手
2006年 北海道大学大学院理学研究院生命理学部門助手
2007年 北海道大学大学院理学研究院生命理学部門助教
2010年 北海道大学大学院先端生命科学研究院助教
2011年 北海道大学大学院理学研究院化学部門准教授

2007年-2009年 東京農工大学大学院生物システム応用学府非常勤講師
2007年-2010年 科学技術振興機構さきがけ研究者
2014年 九州大学先導物質化学研究所客員准教授
2017年-2018年 コロンビア大学生命医工学部客員研究員
2019年 東京工業大学物質理工学院材料系非常勤講師
2019年 福岡大学理学部化学科非常勤講師
2019年 大阪大学工学部非常勤講師
所属学会高分子学会, 日本生物物理学会, 日本化学会, 日本材料化学会, アメリカ化学会
プロジェクト発動分子科学 - エネルギー変換が拓く自律的機能の設計
次世代人工知能・ロボット中核技術開発
感覚と知能を備えた分子ロボットの創成
居室理学部7号館 7-215

化学部門 物理化学分野

角五 彰

准教授

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研究者になったきっかけは何ですか?

“生き物ではないモノが、自分の力で勝手に動く”、このような現象は、感覚的には非常に不思議なことのように思え、好奇心がくすぐられます。幸運にもそんな自ら動くことのできる物質(分子)の研究に携われたのがきっかけで、現在もその研究に没頭しています。

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研究を通して叶えたい夢は何ですか?

鳥や魚だけなく、時によっては私たちも“群れ”をつくります。“群れ”をつくる理由はなんでしょうか?またどのようして“群れ”をつくるのでしょうか?このような問いに対し、生き物ではないけれども、自ら動くことのできる分子(アクティブマター)を使って答えを見出したいと思っています。これらの問いに対する回答が得られれば、例えば、群れることで機能する物質や分子サイズのロボットなどが開発されるのではないかと期待しています。

左:アクティブマターのイラスト、右上:アクティブマターの顕微鏡観察(本人)、右下:観察されるアクティブマターの画像
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挑戦されている大きなプロジェクトを紹介してください。

これまでに科学研究費助成事業である新学術領域研究「知能と感覚を備えた分子分子ロボットの創成」(2012~2017)に参画し、自ら動くことのできる分子(アクティブマター)を用いたアメーバ型分子ロボットの開発に携わってきました。その後、アメーバ型分子ロボットの後継プロジェクトとして、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)次世代人工知能・ロボット中核技術開発プロジェクト(2016~2020)の助成を受けて、分子人工筋肉を開発してきました。現在は、新学術領域研究「発動分子科学」(2018~2022)に参画し、アクティブマターからエネルギーや情報などを取り出す研究を行っています。