研究テーマ | 『アクティブマター』とは、化学エネルギーなどを運動エネルギーに変換する機構を内在的に有した物質群です。自発的に運動を発現するという点で、従来の物質群とは一線を画しています。私たちは、『アクティブマター』の科学を通じて、現在、我々が直面しているエネルギー問題や医療問題を解決することを目標としています。 |
研究分野 | 高分子化学, 生物物理学, ソフトマターの物理, バイオ材料力学 |
キーワード | アクティブマターの科学, 分子ロボティクス, マイクロマシン, 分子機械, 集団運動, 自己組織化, バイオテクノロジー, DNAナノテクノロジー, メカノバイオロジー |
研究紹介
鳥や魚、細胞やバクテリアなどの生き物は,リーダーが存在しないにもかかわず,整然とした“群れ”を形成し,さらに環境合わせて、その形やサイズを変化させることができます。このように“群れ“をなすことで、1個体ではできなかったことが可能になってきます。最近,自発的に運動する生体分子モーターを用いて,このような”群れ“を実験室で再現するとともに物理的な刺激で群れの動きを制御することに成功しました(図1,2)。 “群れ”の研究は車やドローンなどの自動運転の開発にも役立つと期待されます。
生体分子モーターの動的特性を利用することで、従来、測定が困難であった柔らかい材料(ソフトマター)表面のわずかな変形を検出し,その変形の大きさと方向を測定可能な新しい技術を開発しました(図3)。ソフトマターは医療やエレクトロニクスなど多くの分野で近年注目されています。本技術はこのようなソフトマターの表面特性を調べるための新しい手法として期待されます。
ロボットの3要素である「動く・考える・感じる」のすべてを備えた分子ロボットを開発しました(図4)。化学的なシグナルや光の信号など特定の情報を感知し,自発的に“群れ”の形成・解消が可能で、かつ簡単な理論演算も行うことができます。 将来的内は医療現場などで活躍するナノマシンとしての応用展開に期待されます。
バイオテクノロジーにより合成される生体分子モーターとDNAナノテクノロジーにより合成されるDNAナノ構造体(DNAオリガミ)を組み合わせることで,自在にサイズを制御可能な分子人工筋肉の開発に成功しました(図5)。これにより,化学エネルギーで駆動するミリメートルからセンチメートルサイズの動力システムが実現しました。将来的には医療用マイクロロボットや昆虫型ドローンなどの動力源として期待されます。
代表的な研究業績
Daisuke Inoue, Greg Gutmann, Takahiro Nitta, Arif Md. Rashedul Kabir, Akihiko Konagaya, Kiyotaka Tokuraku, Kazuki Sada, Henry Hess, *Akira Kakugo, ACS Nano, (2019)
Kento Matsuda, Arif Md. Rashedul Kabir, Naohide Akamatsu, Ai Saito, Shumpei Ishikawa, Tsuyoshi Matsuyama, Oliver Ditzer, Md. Sirajul Islam, Yuichi Ohya, Kazuki Sada, Akihiko Konagaya, *Akinori Kuzuya, *Akira Kakugo, Nano Letters, 19 (6), 3933-3938 (2019)
Jakia Jannat Keya, Ryuhei Suzuki, Arif Md. Rashedul Kabir, Daisuke Inoue, Hiroyuki Asanuma, Kazuki Sada, Henry Hess, Akinori Kuzuya, *Akira Kakugo, Nature Communications, Vol. 9 (453) (2018)
Daisuke Inoue, Takahiro Nitta, Arif Md. Rashedul Kabir, Kazuki Sada, Jian Ping Gong, Akihiko Konagaya, *Akira Kakugo, Nature Communications, 2016, Vol. 7:12557 (2016)
Akira Kakugo, Yoshiki Tamura, Kazuhiro Shikinaka, Momoko Yoshida, Ryuzo Kawamura, Hidemitsu Furukawa, Jian Ping Gong, J. Am Chem. Soc, 131 (50), 18089-18095 (2009)

学位 | 博士(理学) |
自己紹介 | 鳥や魚の群れなど、美しく整って動くモノや群れて動くモノに興味を持っています。高校を卒業後、北海道大学に進学。細胞の運動や筋肉の収縮に関与する生体分子モーターに出会い、化学エネルギーを運動エネルギーに変換するメカニズムについて研究。博士課程では、生体分子モーターを組み上げることにより化学エネルギーで駆動する世界最小の動力装置を開発。現在は生体分子モーターを駆動力とした分子ロボットの開発に力を入れています。 |
学歴・職歴 | 2003年 北海道大学大学院理学研究科博士課程修了 2003年 北海道大学大学院理学研究科科学技術支援員 2004年 北海道大学大学院理学研究科生物科学専攻助手 2006年 北海道大学大学院理学研究院生命理学部門助手 2007年 北海道大学大学院理学研究院生命理学部門助教 2010年 北海道大学大学院先端生命科学研究院助教 2011年 北海道大学大学院理学研究院化学部門准教授 2007年-2009年 東京農工大学大学院生物システム応用学府非常勤講師 2007年-2010年 科学技術振興機構さきがけ研究者 2014年 九州大学先導物質化学研究所客員准教授 2017年-2018年 コロンビア大学生命医工学部客員研究員 2019年 東京工業大学物質理工学院材料系非常勤講師 2019年 福岡大学理学部化学科非常勤講師 2019年 大阪大学工学部非常勤講師 |
所属学会 | 高分子学会, 日本生物物理学会, 日本化学会, 日本材料化学会, アメリカ化学会 |
プロジェクト | 発動分子科学 - エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 次世代人工知能・ロボット中核技術開発 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
居室 | 理学部7号館 7-215 |