正宗淳 教授

MASAMUNE Jun

解析系

所属
大学院理学研究院
研究分野
大域解析学
キーワード
ラプラシアンの自己共役拡張, 多様体上の熱核, 調和関数のリュービル性

研究概要

研究内容

A. アインシュタインは、3次元ユークリッド空間のブラウン粒子の期待値は拡散方程式で記述されることを示しました(1905ー1907)。その後多くの数学者の貢献により、似たような現象がリーマン多様体と呼ばれる「曲がった空間」やグラフなどの「離散的な空間」、さらにはそれらを一般化した「ディリクレ形式」においても起きていることが分かりました。中心的概念は「エネルギー」、「ラプラシアン」と呼ばれる2階の楕円型作用素及び「熱核」と呼ばれる熱方程式の基本解です。空間における拡散現象と空間の幾何学に関する非常に興味深い研究が解析学や確率論、幾何学の研究者を中心に活発になされています。私はラプラシアンの自己共役性拡張、熱核の保存則や再帰性、調和関数のリュービル性など、空間の大域的性質に関わる諸問題を主に関数解析的及び偏微分方程式の手法を用いて研究しています。

主要論文

  • Masamune, J; Schmidt, M. A generalized conservation property for the heat semigroup on weighted manifolds Math Annalen. First Online 17 August 2019 (1-38) DOI 10.1007/s00208-019-01888-3
  • Haeseler, S; Lenz, D; Keller, M; Masamune, J; Schmidt, S. Global properties of Dirichlet forms in terms of Green’s formula, Calculus of Variations and PDEs 56 (2017), no. 5, Art. 124, 43pp DOI: 10.1007/s00526-017-1216-7
  • Grigor’yan, Alexander; Masamune, Jun. Parabolicity and stochastic completeness of manifolds in terms of the Green formula. J. Math. Pures Appl. (9) 100 (2013), no. 5, 607–632.
  • Masamune, Jun. Mosco-convergence and Wiener measures for conductive thin boundaries. J. Math. Anal. Appl. 384 (2011), no. 2, 504–526.
  • Masamune, Jun. Essential self-adjointness of Laplacians on Riemannian manifolds with fractal boundary. Comm. Partial Differential Equations 24 (1999), no. 3-4, 749–757.

個人のWebPage

http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~jmasamune/

連絡先

jmasamune(at)math.sci.hokudai.ac.jp

学生へのひとこと

好奇心と根気を大事に数学を学び発展させましょう。

インタビュー

ご出身はどちらですか?

出身は東京で,高校は國學院大学久我山,学部は中央大学,大学院は東北大学です。

どのような大学生活を送っていましたか?

学部時代は個人的にセミナーを見て頂くなど先生方によく面倒を見てもらいました。都内数学科学生集合というインカレの数学サークルに所属してセミナーや合宿で数学や物理学専攻の学生とよく議論をしたり,数学の勉強以外にはコーヒー屋でアルバイトをしたり,山に登ったり,自転車で旅に出たりと色々とアクティブに過ごしていました。大学院は数学漬けでした。

休日は何をしていますか?趣味は何ですか?

趣味らしいことはここ数年あまり出来ていませんが,時間ができたら登山や自転車,カヌーなどの旅に出たいと思っています。

先生の研究されていることを教えてください

我々が住んでいる3次元空間の中でランダムな動きをする粒子を沢山持ってくると,それらの位置の平均は拡散現象や熱の分布などを表現する拡散方程式に従うことがアインシュタインによって発見されました。つまり,ミクロ・レベルでは確率的にしか捕まらない現象がマクロ・レベルでは決定論的に捕まるということです。その後の研究で,アインシュタインの発見が実は曲がった空間や離散的な空間でも成り立っていることが明らかにされて,現在では空間の形と空間内の拡散現象の関係をミクロ,マクロのレベルで定性的・定量的に調べる研究が非常に活発に行われています。日常生活でも,部屋の形によって温まり方は違うし,コップの形が違うと中に入っている水の動きも違うし,水でなくてもっと粘性がある液体だと,動きも異なりますよね。そのような運動を決定する空間の形の研究の中で私は特に拡散現象の長時間挙動に関連する問題を研究しています。例えば,空間の無限遠での体積が非常に大きいと粒子が無限遠に強く吸い寄せられて空間から消えてしまうことが知られています。このような不思議な現象が起きる空間のメカニズムを調べています。

どのようにして数学者になりましたか?

修士時代にご指導頂いた砂田利一先生のじっくりと数学に取り組む姿勢が自分に合っていて,それもあり,修士を終える頃には本格的に数学を研究したいと思うようになりました。博士に進んで浦川肇先生の下で研究を続けましたが,当時やっていた研究に興味を持ってくれたイタリア・バジリカータ大学の先生から声を掛けて頂き,そこで期限付き助手になりました。続いてローマ大学とインペリアル・カレッジでモスコ先生とグリゴリアン先生の下でポスドクをした後にペンシルバニア州立大学に就職しました。元々,日本で働きたい気持ちがあって海外に出ましたので,北大で教育と研究に携われることになり,とても喜んでいます。

いつ頃から数学に進もうと思いましたか?

数学に対しては「数学的な思考方法をしないと科学では本質をついた仕事はできない」と聞かされていたこともあり,子供の頃から憧れのようなものはありました。

海外生活が長かったとお伺いしました。どのくらい、どちらにいらっしゃったのですか?

イタリアとイギリス,アメリカに計約14年いました。

海外の学生と日本の学生を比較して、何か違いはありますか?

イタリアではアートやアーティスト,文化といったものが社会の中心にあってよく尊敬されていると思いますが,数学もそういう対象に含まれている印象があります。講義中に学生が寝るなどということもまずないですし,先生もよく尊敬されていたと思います。アメリカ人の学生も礼儀は“アメリカ流”できちんとしていますが,基本的にファーストネームで呼びますし,先生と学生の関係は日本やイタリアに比べるとフランクです。日本の学生は真面目で教えたことをきちんとやるという印象です。

札幌は初めてですか?

祖父や叔父が北大で教えていたこともあり,札幌には子供の頃から遊びに来ていました。街も綺麗だし人も親切な好きな街です。

数学科に行きたいなと思っている高校生、または大学1年生に向けて、何かアドバイスはありますか?

これについては,ある数学者の話をさせてください。ある学生がその先生に何日も続けて数学の質問をしたそうですが,とても執拗な上に基礎的なことを理解するにも時間が掛かるので,多少うんざりしながら「この子は数学には向かない」と思うようになったそうです。その学生が質問に来なくなり,先生もそういったやりとりを忘れた頃,ある重要な未解決問題が解かれた,それも,その学生によって解かれたという衝撃的なニュースが流れたそうです。そういう経験もあって,その先生は数学をする姿勢として“persistent”であることが重要だと仰っていました。私もそう思います。

先生のページに「好奇心と根気を大事に,数学を学び発展させましょう」とありました。根気の部分で、例えば研究に行き詰まることはありますか?そんな時はどう対処しますか?

程度の差はあれ,いつも何かしら行き詰まっています。数学では大きな壁に当たるということはとても良い兆しで,逃げないことが大事だと思います。手を動かして計算をしたり関連文献を読んだり,他の人とアイディアを交換したり,その問題と誠実に向かい合っていると,数学は姿を現してくれることがあります。人生では行き詰まったら迂回することも必要ですが,数学の場合はチャンスだと思います。

2016年(平成28年) 10月インタビュー実施