神保秀一 特任教授
研究概要
研究内容
特異的領域変形と偏微分方程式:
偏微分方程式の境界値問題はユークリッド空間の領域上において定義される。領域の形状や境界条件等の外部条件を決めることで解の存在やその構造が具体化される。そして解の構造や性質を調べることが数学の基本的な課題となると言える。
私の研究は偏微分方程式の特定の解を外部条件の幾何学的な性質に関する依存性を中心に解析する。これを遂行するための基本的な手法は関数解析、超関数論、スペクトル理論等の解析学分野の方法であるが数値計算等も今後行うことを考えている。このような課題は身の回りで常に現れる現象にも見られる。たとえば、音や光などの現象が代表例である。これらの性質はそれが存在するスペースの形状を忠実に反映して起こっている。実際、我々が肉眼で物を観察して形を認識できるということが正にそれであり、また、声を発生させてその音色が自身の口やのどの形状に密接に関係していることも例として挙げられる。このように研究テーマの出所は素朴なものであるが、数学の古典的問題とも深く関わり、また広く豊かな数学的な課題とも結びつき豊富なテーマをさらに我々に与えてくれる。今後若い人々が参加して一緒に取り組んでくれることを期待している。思考力、集中力、体力、根性、誠実、…何でも得意技をもっている人ならさらに大歓迎。
主要論文/主要著書
- S. Jimbo, Singular perturbation of domains and the semilinear elliptic equation II, J. Differential Equations 75 (1988), 246-289.
- S. Jimbo, Y. Morita and J. Zhai, Ginzburg-Landau equation and stable steady state solutions in a non-trivial domain, Comm. PDE 20 (1995), 2093-2112.
- S. Jimbo and S. Kosugi, Spectra of domains with partial degeneration, J. Math. Sci. Univ. Tokyo 16 (2009), 269-414.
- 神保 秀一, 偏微分方程式入門, 共立出版, 2006.
- 神保 秀一, 森田 善久, ギンツブルク-ランダウ方程式と安定性解析, 岩波書店, 2009.
参考
個人のWebPage
https://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~jimbo/
連絡先
jimbo(at)math.sci.hokudai.ac.jp
学生へのひとこと
幸運やチャンスの女神はむこうからは歩いてきません。失敗をおそれず自分から探しに行くことを心がけましょう。たくさんのトライがあなたを強くしてくれるはずです。
インタビュー
Q. 出身大学と大学生活はどうだったか教えて下さい。
旭川東高校卒業、出身は東京大学で,学生時代は普通のまじめな学生だったと思いますが,数学科の中ではあんまりできる方ではなかったと思います。
Q. 数学は学部生のころから好きだったのですか?
物理に行きたかったのですが,数学も好きでした。
Q. 物理に行きたかったにも関わらず大学院は数学系なのですか?
そうです。元々教養学部の時は実験の方に行きたかったのですが,進振り(注:進学振り分け制度)がありまして行けなかったんですね。それで数学科だと行けるというのでそちらに進学しました。
Q. 大学院に入って,更に勉強しようと思ったきっかけは?
周りの人が皆優秀で,大学院に行くので私も行きたいと思いまして(笑)
特に就職したいところもなくて大学院を受けました。受かる自信はなかったんですが受かりまして。だから,研究者になろうという強い意志は当時はあまりなかったです。
Q. どのような研究をされてますか?
偏微分方程式の解の定性的な性質です。なるべく物理現象に関連のある研究をしたいと思っています。元々物理学科に行きたいと思ってたこともあるんですけど,物理の色んな本を読むと今でも大変憧れます。ですから,そういうのに関わってみたいなと思ってます。
Q. 大学院の修士課程でのメリットはなんですか?
専門を極めるというか,何かに集中して深く学問を修めるという事はどのような分野に進んでも良いと思います。僕は偏微分方程式をやってますが,修士の時にはリーマン幾何も勉強してたんです。それは全然今は使ってませんが,何かプラスになったように思えます。
Q. 北大の数学専攻に大学院で勉強することの売りは何かありますか?
北大はリベラルな非常にいい大学なので,そこが良いと思います。後は,分野のバラエティが広いのでそういう面でも色々な先生がいていいと思います。
Q. 大学院に進学を考えている学生にメッセージを。
これからは色々流動的な時代なので好きな事を勉強して一つの道を究めるというか,切りのいいところまで何かしっかりやっておくといいと思うんです。学部だと中途半端なところで終わってしまうので,大学院まで行って修士論文を書くとかね。そういうところまでやっておいて,それが必ずその後の仕事にプラスに作用すると思います。
2005年(平成17年) 5月インタビュー実施